PR

うつ病およびその治療薬について

yakuzaishi-k
PR

 うつ病は気分障害の一つです。自殺の誘因となったり、長時間にわたり就労・就学が困難な状態を引き起こすなど大きな社会的損失をもたらす疾患ですので、その病気と治療薬についてです。

うつ病の診断基準

 うつ病の診断基準は以下の①から⑨の項目のうち、5個以上の項目(①か②のどちらかは必ず含まれる)が毎日、2週間以上続く

①抑うつ気分(ほとんど一日中続く)

②興味ないし喜びの著しい喪失(ほとんど一日中続く)

③体重あるいは食欲の変化(減少ないし増加)

④睡眠障害(不眠もしくは過眠)

⑤無価値観あるいは自責感

⑥自殺念慮(反復しておこる)あるいは自殺企図ないし明確な自殺の計画

⑦疲労感あるいは気分の減退

⑧思考力や集中の減退あるいは決断困難

⑨精神運動性の焦燥(イライラ落ち着かない)もしくは抑制(動きが少ない)

うつ病の発現機序、カテコラミン仮説

 うつ病患者では精神健常者に比べてセロトニン(5-HT)およびノルアドレナリン(NA)神経終末からの5-HTおよびNA遊離量が減少しています。結果として後シナプス受容体の数が増え(受容体アップレギュレーション)、その状態でストレスなどの負荷がかかると、うつ病患者ではより強い刺激が伝わり、下垂体-副腎皮質(ストレス)系が大きく動くことになり、うつ状態に陥ると考えられています。

抗うつ薬の分類

 抗うつ薬は三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、NaSSA、S-RIM、その他に分類されます。その内容と代表的薬剤について記載していきます。

三環系抗うつ薬

 化学構造内に三環系構造を持つことからこのように呼ばれています。前シナプス週末に存在する5-HT、NAトランスポーターを抑制することでうつ状態時に枯渇傾向にあるシナプス間隙の5-HT、NA量を増やします。

アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩):1日50~100mg、1~3回分服。最大1日225mg

トリプタノール(アミトリプチリン塩酸塩):1日30~75mgより開始、1日150mgまで漸増、分服。

アモキサン(アモキサピン):1日25~75mg、1~数回に分服。効果不十分で1日150mg。

トフラニール(イミプラミン塩酸塩):1日25~75mgより開始し、1日200mgまで漸増、分服。1日300mgまで増量可。

 三環系抗うつ薬は起立性低血圧、眠気、体重増加、鎮静、口喝、便秘などの副作用が現れやすいです。またM₁受容体阻害作用が強いため緑内障、心筋梗塞の回復期の患者にすべて禁忌となっています。

四環系抗うつ薬

 化学構造内に四環系を持つことからこのように呼ばれています。四環系抗うつ薬は三関係抗うつ薬より抗うつ効果はやや弱めですが、M₁受容体阻害作用が弱いため高齢者にも使用しやすいといった特徴があります。

ルジオミール(マプロチリン塩酸塩):1日30~75mg、2~3回分服。

テトラミド(ミアンセリン塩酸塩):1日30mg分服、1日60mgまで増量。

テシプール(千知プチリンマレイン酸塩):1日3mg、1日6mgまで増量可、分服。

 M₁受容体阻害作用が強いルジオミールは緑内障、心筋梗塞の回復初期、尿閉(前立腺肥大)のある患者に禁忌ですが、他の薬剤は特に規制はありません。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

 前シナプスの5-HTトランスポーターを選択的に阻害し、シナプス間隙における5-HT量を増やすことで抗うつ効果を示します。三環系抗うつ薬より副作用が少ない事が特徴です。

ジェイゾロフト(セルトラリン塩酸塩):1日1回25mg、1日1回100mgまで漸増、最大100mgを超えない事。

レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩):1日1回10mg、1週間以上間隔をあけて増量、1日20mgを超えない事。

パキシル(パロキセチン塩酸塩水和物):普通錠は1日1回20~40mg、夕食後。1回10~20mgより開始し、1週間ごとに10mg/日増量、1日40mgまで。CR錠は1日1回12.5mgを初期量とし、1週間以上間をあけて25mgに増量。増量は12.5mgずつ、1日50mgを超えない事。

デプロメール、ルボックス(フルボキサミンマレイン酸塩):1日50mg(初期量)、1日150mgまで増量、2回分服。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

 前シナプスの5-HTとNAトランスポーターのトランスポーターを同程度阻害して、シナプス間隙におけるこれらカテコラミンの量を増やすことで抗うつ効果を示します。SSRIと同様に副作用が非常に少なく、またNA系にも作用している事から効果発現がSSRIよりも早く、意欲を高める作用を期待できます。

サインバルタ(デュロキセチン塩酸塩):1日1回40mg(朝食後)、1日20mgより開始し、1週間以上間隔をあけて1日20mgずつ増量。

イフェクサーSR(ベンラファキシン塩酸塩):1日1回37.5mg(初期量)、1週間後より1日1回75mg、食後。増量は1週間以上間隔をあけて1日75mgずつ。

トレドミン(ミルナシプラン塩酸塩):1日25mg(初期量)、1日100mgまで漸増、食後1日2~3回に分割。

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

 NAおよび5-HT神経終末に存在するα₂受容体を抑制することでNAおよび5-HT遊離を亢進します。同時にNA細胞体上、そしてNA細胞体から5-HT神経細胞受容体の抑制、さらに5-HT神経細胞上に存在するα₁受容体を刺激することでNA神経及び5-HT神経の活性化をします。また5-HT₂/₃受容体を遮断することで5-HT1受容体への作用を強化しています。以上のような多彩な作用を介してNAおよび5-HT神経を活性化することで抗うつ効果を示す薬剤です。

リフレックス・レメロン(ミルタザピン):1日15mgを初期量とし、1日1回15~30mg、就寝前。増量は1週間以上間隔をあけて15mgずつ。1日45mgを超えない。

セロトニン再取り込み/セロトニン受容体モジュレーター(S-RIM)

 セロトニン再取り込みに加え、セロトニン1A受容体を刺激することで抗うつ効果を示します。胃腸症状は少ないです。

トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):1日1回10mg、1日20mgを超えない範囲で増減、増量は1週間以上間をあける。

その他の抗うつ薬

レスリン・デジレル(トラゾドン塩酸塩):1日75~100mg(初期量)、1日200mgまで増量、1~数回分服。

 トラゾドンは選択的5-HT再取り込み阻害作用と類似の性質を持っていますが、H₁受容体阻害作用が強く、眠気や鎮静の作用が強いために就寝前服用で睡眠導入を目的に使われることが多くなってきました。

薬物療法管理の留意点

 抗うつ薬を用いた治療についての、患者さんへの情報提供を含めた薬物療法留意点です。

抗うつ薬の効果発現について

 抗うつ薬は効果が現れるまで2~4週間の服用が必要であることを患者さんに説明します。この間に一過性の不安の増強や不眠がみられる場合は、ベンゾジアゼピン系抗不安・睡眠薬が有効とされます。

まれな副作用とその対処法について

 脳内セロトニンが過剰になると、意識障害、高熱、ミオクローヌス、反射亢進などを主症状とするセロトニン症候群を生じます。発症した場合にはセロトニン作動薬を中止すればほとんど1~2日間以内に症状は消失します。

大量服用に注意する

 三環系抗うつ薬を大量に服用した場合、せん妄、けいれん、腸管膀胱麻痺、重篤な不整脈、昏睡状態、呼吸抑制に至る重篤かつ致命的な状態を生じえます。長期処方は避けることが望ましいです。

まとめ

 ここ最近は三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬の処方を目にする事は少なくなってきたと思います。やはり安全性が高く、副作用が少ないSSRIやSNRIの処方の方が多いように感じます。各薬剤の作用の仕方を理解し、適切に患者さんに説明できるようにしなくてはいけないと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました